4月25日、緊急事態宣言初日、藤原歌劇団オペラ「ジャンニ・スキッキ」が終わりました。
心配しましたが、会場が神奈川県でしたので公演は普通に行われました。
久しぶりのオペラ出演に、早くから譜読みに取り掛かり、稽古場に通う日々も、心なしか足取り軽やかでした。
やっぱりオペラは楽しい。「ああ、自分はオペラ歌手なんだ!」と再確認しました。
万全の態勢で臨んだものの・・・
今回の演目「ジャンニ・スキッキ」は、5〜6年前に沖縄のオペラ団体「オペラ愛ランド」で演出をさせて貰った事がある。
しかし自分が歌うのは今回初めてで、ジャンニ役は初役だ。
演出をした訳だからオペラの細部まできちっと読み込んだ筈だったのに、大演出家、岩田達宗氏の前では赤子も同然。
演出プラン発表の日、4時間くらいかけて作品の持つ意味、それぞれのキャラクター、それらがどう絡むか、どういう時代か等々、細かく説明を受けると僕らはもう、印籠を見せられた悪代官のごとく、ははぁーと平伏すしかない。
これまで何度も御一緒させて頂いたが、やはり素晴らしい演出家だ。
はっきりとした演出プランの中で、僕ら演者は岩田さんが考えた通りに、忠実に演じていくのだが、決してがんじがらめでは無い。敷かれたレールの上では自由に演じる事ができる。
僕らが工夫して、或いはその場のノリでやった演技に対しては、その鋭い感性でダメが出るか、または「お買い上げ!」が出る。(氏は役者の演技を気に入った時、お買い上げ!と言う)
特にその良かった芝居、お買い上げ頂いた芝居に対しての、喜び方はまるで子供の様で、その笑顔見たさに僕らはまた岩田さんの手の平の上で一生懸命工夫を凝らして演技をするのだ。
コロナ禍での稽古の難しさと見つけたもの
画像参照:日本オペラ振興会
今回、コロナ以来初めてフェイスシールド無しの公演だった。
勿論、稽古場ではフェイスシールドに加えてマスク着用。なかなか苦しい。ちゃんとブレスをしたいのに出来ない。
つまり歌って息を吐いた後、マスクの中、フェイスシールドの中に吐息が溜まり、次のフレーズを歌う為に息を吸うと、その残っていた吐息が先ず肺に入って来るから、新鮮な酸素が吸えないで、悪いブレスがどんどん積み重なって、長く歌うと凄く苦しくなってくる。
ゲネプロから全て外して普通に歌ったら、まあ〜楽なこと楽な事…、マラソンの高地訓練みたいな話だと思いました。
ブレスがしっかり吸えない、お腹に入らない事が本当にキツイ事だと、改めて思いました。
そんな訳で、練習を開始した音楽稽古から全員マスクをして出会ってるから、もちろん古くからのお付き合いの方は別として、今回初めてお会いした、初共演する若手の方は、ゲネプロで初めてお顔の全てを拝見して、こんな可愛い人だったんだ、演技の時も、こんな素敵な表情してたんだと改めて思ったりして…。
やっぱり僕らは、オペラの舞台で演技をする時、相手役の表情が見える事がとても大事です。相手が良い芝居をすると、自分の芝居のテンションも違ってくる。
早くマスク無しで稽古出来る様になればいいですね。
隠したつもりはないけれど
画像参照:日本オペラ振興会
今回、僕が目指すのは「イタリアのちょいワルおやじ」だったので、可愛い娘ラウレッタが居るけど、年齢的にはそこまで年寄りでは無い。
例えば椿姫のジェルモンみたいな老け役では無いので、珍しく白髪カツラも付け髭も無し。
いつも普段は短めの髪型(特段のこだわり無し)にしているので、頑張って伸ばし、最近の僕にしては珍しい髪型です。
地毛(自分の髪)を床山さんにカッコよくセットして貰いました。
観に来てくれた愛弟子から終演後に問われた。「先生、あの衣装、お腹に何か入れてたんですか?」
衣装のセーター、腹が出て見えたのでしょう。
僕は答えました。
「いや、地腹(自分の腹)です。」
お後がよろしいようで。