やっぱ俺・・歌が好きだ!

『生きて行く意味』、『自分の存在価値』、『自分と世の中との関係』・・これらを毎日ボンヤリ考えていた。

はっきりとした答えは見つからず、ファウスト博士の様に悩んでいると、すぐに『食欲』というメフィストが、「まあ良いじゃないか、そんな事、真剣に考えなくとも、取りあえず何か食えよ!」と語りかけてくる。
(ああ・・また今日という日も、ただ食うだけで終わってしまった・・)

大好きな映画『おくりびと』の中で、名優、山崎努が演じる納棺会社社長が、仕事に迷いが出た主人公の大悟に、フグの白子を網で焼きながらの名セリフ・・

「死ぬ気になれなきゃ食うしかない、食うなら美味い方がいい。美味いんだよなぁ~、困ったことに。」

まさに生きる事は食う事だ。
しかし自分の人生は果たして何日あるのか分からないが、何万何千分の百日くらいは明らかに、何の生産性の無い、食うだけの日々を送ってしまった。

僕は大病を患い、一か月間の手術入院、その後一か月ほどの自宅療養を経験しているので、今回の様に何もせず、自分とひたすらに向き合う時間は、過去何度か経験している。

しかし、あの時は身体の中の悪いモノが取り去られ、日一日と健康を取り戻し、身体の活力が僅かずつ、みなぎって行くのを体感した。

だから自分には『復活』という大きな目標があったので、喪失感、疎外感は全く無く、病気をして得たものも有ったので、何も無駄な時間とは思わなかった。

病気が治り、健康を取り戻した時、まず初めにしたいこと、それは歌う事だった。
以前と同じように声が出せる様になり、信仰は無いが、本当に神様に感謝した。

しかし、今はどうだ・・歌はまったく歌う気にならない。

自分は歌い手なのに歌わない・・
何故なら僕の歌を聴いてくれる人が居ないから・・。

自分は歌が好きなのか? 何のために歌うのか?
訳が分からなくなった。

そんな中、数人の愛弟子達が週一くらいのペースで、コロナ禍の中、細心の注意を払った上でレッスンに来てくれていた。
「先生さえ構わなければ、僕はレッスン行きますよ!」

有難い事だ。

これが実現できたのも、愛弟子とフェイスタイムで長話しをしている中で、冗談で言った一言・・
「レッスンもコンビニのレジみたいに、ビニール掛けてやるかぁ・・」から始まった。

その時は大笑いをして流していたが、何故か気になり、翌日にホームセンターに走った。
レッスン室を共有する妻と、二人で必死に考えて『飛沫感染防止ビニールカーテン』を我が家のレッスン室に設置した。

LA VITA 牧野正人 飛沫感染防止

歌う人とピアノを仕切る、90センチ幅のビニールのカーテンを3枚、天井から吊り下げ、マスク無しで面と向かって、喋ったり歌ったりする空間分割が出来た。

さらに、家中の断捨離ついでに、洗面所にカーテンレールを取り付けて、脱衣場や洗濯場との仕切りを作って、レッスンに来た人に、しっかり手洗いとうがい、消毒をしてもらう様に工夫した。
もちろんレッスンが終わったら、窓は全開にして換気を行う。

これでかなり感染予防が出来たと思う。
僕のウツ気味の心は、愛する弟子によって救われた。

何しろ、みんな仕事が休みだから、身体や喉が元気!・・健康的な、青空の様なスカッとした声を出されて、本当に気持ち良さそうだ。

釣られて僕も一緒に、久しぶりに気持ち良く声を出す。

やっぱ俺・・歌が好きだ!

レッスンを終えて、皆さん清々しい顔をして帰って行く・・。
「ああ~気持ち良かったぁ・・スッキリした。」

スポーツジムかっ!